スクール特集(報徳学園中学校の特色のある教育 #12)

海外大学への進学を後押し! 報徳型グローバル教育のあり方
報徳の「徳」を多様性や個人の強みととらえ、違いを認め合うグローバル教育を実践してきた報徳学園は、海外での大学進学を後押しする仕組みがある。生徒や保護者を支援する鈴木知美さんに話を聞いた。
報徳学園は、伝統的に大切にしてきた「報徳思想」を土台に、グローバル教育を広げてきた。2024年からは、海外大学進学を専門に支援するカレッジカウンセラーを迎え、卒業後の選択肢として海外へチャレンジできる体制を整えている。進学の選択肢を海外にも増やすことで、生徒一人ひとりに最適な未来を後押しする。進学サポート強化は、「本校から海外大学へ進学する生徒をもっと輩出したい」という川口直彦校長の強い思いによるものである。日本での大学進学と同じように海外進学も当たり前の選択肢となることを目指している。カレッジカウンセラーの鈴木知美さんは、生徒と保護者に伴走しながら海外大学進学支える頼もしい存在である。同校が描く「報徳経由世界行き」のストーリーを鈴木さんに聞いた。
▶︎カレッジカウンセラー 鈴木知美さん
国や文化を越えて活躍できる人材を育成するグローバル教育
海外の文化に触れ、違いを認め合う姿勢を育むことは、二宮尊徳の「報徳思想」と深く結びついている。相手の良さを見いだし、多様性を理解してともに生きる姿勢を学ぶことは、国際社会で生きるための基本である。この方針のもと、報徳学園中学・高校では、イギリスやアメリカ、オーストラリアなどでのホームステイや語学研修、日常的にネイティブ講師とコミュニケーションができるC-Roomの設置など、多彩な異文化交流プログラムを展開してきた。
同校では、短期留学や語学研修を経験した生徒が「楽しかった」「自分に合っている」と振り返る場面も多い。そうした成功体験がきっかけとなり、その後の「英語をもっと勉強したい」「世界をもっと知りたい」という思いへとつながっていく。その芽を大切にし、次のステージへと橋渡しをするのが、報徳学園のグローバル教育の特色である。
▶︎アルパカーキ(アメリカ)
▶︎パース(オーストラリア)
海外大学進学支援を本格的にスタート
同校では、今までにも主にスポーツで海外へ進学する生徒がいたが、2024年からはグローバル教育の「出口」として、海外大学進学を支援する体制がさらに強化された。
川口校長は「生徒を海外に送り出してあげたい」という強い思いを持ち、進路指導部とともに模索を続けていた時、出会ったのがカレッジカウンセラーの鈴木知美さんだ。鈴木さん自身は、中高時代をアメリカで過ごし、商社勤務や保育士を経て、インターナショナルスクールで児童から中高生まで幅広く教育に関わってきた経歴を持つ。「子どもの未来を支えたい」という一貫した思いで、生徒や保護者を支援している。生徒一人ひとりの背景に寄り添い、丁寧に進路を設計する姿勢が評判だ。「グローバル化が進む今、海外進学は特別なものではなく、日本国内の大学進学と同じように、将来の可能性を広げる自然な選択肢のひとつ。ただ情報が圧倒的に少ないために困難に感じられる部分をサポートしています」と自身のスタンスを説明する。
実際、海外大学への進学は、日本の大学とは仕組みが異なり、情報収集から出願、奨学金の申請やエッセイの準備など、家庭だけで支えるには難しい点が多い。また保護者にとっても、事情のわからない海外での生活や治安への不安は大きい。鈴木さんは情報を整理し、「選択肢は必ずある」と生徒と保護者に伝え、語学力や経済力などで、簡単にあきらめてしまわないよう背中を押している。「進路に迷う段階でも、少しでも“海外”という言葉に心が動くのであれば、最初の一歩を踏み出してみてほしい」と鈴木さんは語る。
また学校の方でも、生徒が気軽に海外への思いを口にできるよう、鈴木さんのカウンセリングを受けられるよう工夫をしている。それが「1%面談」だ。「1%でも海外に進学してみたいという気持ちがあったら、カウンセリングだけでも受けてみよう」と生徒たちに声をかけているとのこと。現在は毎週月曜に在校する鈴木さんのもとを、海外渡航経験の有無を問わず生徒が訪れ、グループセッションをして将来の夢を語ったり、自身の思いを伝えるシーンが浸透してきている。
▶︎川口直彦校長
▶︎C-Room
これからの時代に必要な資質
海外へはばたく子どもたちを支援をしてきた鈴木さんに、グローバルな時代に必要な資質や力について聞くと「オープンマインドかな」と答えが返ってきた。今、時代は予測不能である。AIの進展や国際情勢の変化、インバウンドの拡大など、子どもたちを取り巻く環境はこれからも大きく動いていく。こうした時代に必要なのは、適応力と対応力であり、そのためには自分の強みを「徳」として育み、個の力を十分につけておくことが求められる。一方、足りない部分は仲間と補い合うといった逆転の発想で、自分の力を最大限に発揮できる場を見つけることが求められる。
文化や考え方の違いを受け入れ、自分の常識が当たり前ではないと気づくことが、国際社会での共存につながる。報徳学園の伸びやかな校風は、まさにこのオープンマインドを育てる土壌だ。男子校には実に個性豊かな生徒が集まっている。団結力が強く、仲間とともにやり遂げる経験が豊富な報徳生は、海外の舞台でも力を発揮できると、鈴木さんは期待しているそうだ。
▶︎イギリス
<取材を終えて>
報徳学園の海外大学進学支援は、無理に海外進学を推し進めるのではなく、生徒が納得して選べる進路を整えることに価値を置く。国内外を問わず、自分の意志で未来を切り拓く力を育てることこそ、報徳学園がめざす教育だと感じた。
報徳学園ではスポーツを通じて世界へ挑む生徒も少なくない。サッカー部は海外でプロを目指すような卒業生を輩出している。また現在、ラグビー部には「プレーヤーではなく、レフェリーとして世界を舞台に活躍したい」と目標を掲げる生徒も現れているそうだ。仲間と切磋琢磨しながら培った報徳生の強さと柔軟さは、世界の舞台でも必ず生きるだろう。
さらに2025年は、台湾の大学2校と提携を結び、初めて海外進学に挑戦する生徒にとって現実的で安心できるルートが整った。日本から距離が近く、生活費用も抑えられ、何かあればすぐに帰国できる環境だ。
「報徳経由世界行き」―この言葉は報徳学園のグローバル教育のキャッチコピーだ。少しでもこのキャッチコピーにワクワクしたら、ぜひ鈴木カウンセラーのもとを訪ねてみてほしい。1%の興味からでも、我が子の人生が大きく広がるきっかけになるはずだ。
▶︎C-Room
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