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雲雀丘学園中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(雲雀丘学園中学校の特色のある教育 #11)

雲雀の生徒は中だるみなし!自己肯定感・効力感を育む探究活動。

関西私立中高の中で先駆けて探究型学習に注力してきた雲雀丘学園中学校・高等学校。高校2年生の「アクション探究」を中心に、生徒のやる気につながる探究活動についてレポートする。

雲雀丘学園中学校・高等学校では授業としての「探究」のほか、課外活動として多種多様な探究活動を設定している。その中でも、高校2年生を対象とした「アクション探究」は数々の探究コンテストで入賞し、注目を集めている。アクション探究での取り組みを中心に、探究活動を通して生徒たちがどのように成長していくかを、入試広報部長の今岡祐資先生に語ってもらった。

▶︎入試広報部長 今岡祐資先生

より深い探究型学習のために生まれたアクション探究

充実した探究活動の成果を活かし、毎年多くの生徒が大学入試の総合型・学校推薦型選抜で合格を勝ち取っている雲雀丘学園中学校・高等学校。同校では週1、2時間の「探究」の授業のほか、大学や企業との連携講座「探究プロジェクト」、同校教員による特別講座「探究ゼミ」を課外に設定する。

その「探究ゼミ」に新たに加わったのが高校2年生の希望者で行われる「アクション探究」だ。その成り立ちについて、今岡先生は次のように説明する。

「本校では高1で全員が探究論文に取り組みます。中でもレベルが高い論文は、お付き合いのある大学の先生などに査読をお願いし、アドバイスをいただきます。その後、文理に分かれ「専門性の芽生え」となる高2に進みます。探究論文の取り組みの中で先生方からいただいたアドバイスを活かし、さらに専門的な内容に踏み込めるように始めたのが高2生希望者による『アクション探究』です」

アクション探究では、探究論文のテーマを引き続き研究するほか、自分の興味がある別テーマに取り組むことも可能だ。学校の授業の枠にとらわれない多彩なテーマが集まるという。テーマに詳しい教員が各生徒に担当として就き、二人三脚で進めていく。

外部の探究コンテストでの受賞が続出

アクション探究では、外部の探究コンテストに挑戦することを最終目標に据えている。その理由について、今岡先生は「校内ですごいねと褒め合っているだけでは、学びが深まらないからです」と語る。

「外部の探究コンテストに勝ち進んでいくと、企業の有名な方や研究者による審査を受けることになります。専門家に評価を得られる内容なのか、実際の社会で通用するかという外部の風を感じることで、生徒の視野も広がります」

そもそも、同校の創立の精神には『社会に役立つ人間の育成』がある。これは創立者であり、サントリーの創業者でも鳥井信治郎の信念によるもの。その思いのもと、同校では創立以来、社会で実際に役立つ学びを追求してきた。探究活動でも、それを重視した活動を行っており、探究活動の最終目標に外部コンテストを据えるのは当然とも言えよう。

同校の創立の精神が時代とうまくかみ合ってきた結果、2023年度のアクション探究では数多くの受賞が出た。以下はその一例だ。

統計データ分析コンペティション
○統計数理賞
「地価に関する最適モデルの構築と手法提案」※1

中高生探究コンテスト
○【好き部門】最優秀賞
「和菓子を世界へ伝えたい to Africa」※2

e-GOVデータコンテスト
○データ分析賞「フレイル予防に関するデータ収集方法の提案」

全国中高生AI・DS探究コンテスト
○AI・DS優秀賞
「ボカロ曲の数値化による好む曲の選別モデル構築と評価」

○人工知能学会特別賞
「Chat GPTを活用した悪意あるコメント抽出AI開発の可能性」

女性が活躍する社会をデザインするスタートアップデータソン2023
○優秀賞
「三世代世帯数の増加による女性の社会進出の促進」

答えを与えられるのではなく、自分で導き出す

外部コンテストを目指して探究活動を進めて行く中で、高校の分野を超えた学びを生徒達は得ると今岡先生。統計データ分析コンペティションで受賞した地価モデルの探究(※1)を例に挙げて、次のように説明する。

「地価モデルの探究では、いろいろな自治体の地価に影響を与えるデータを取り扱いました。自治体ごとにデータの様式がまったく違うため、まずどの項目が同じ意味を持つのかを読み解くのが大変。次に、どの要素がどの要素と組み合わさって地価にどのように影響するのかを考えると、無限に近いパターンがあります。それを地道に組み合わせて、彼らは自分たちでモデルを作り上げていきました。通常、高校までの学びとは教科書に載っている解法に従い、答えを求めるもの。しかし、彼らは自らで答えを導き出す経験を、この探究活動を通して得ることができた。これは大学以降につながるとても重要な学びです」

また、和菓子をテーマに探究した生徒(※2)は、目を見張る行動力で果敢に社会に関わって行ったと今岡先生は続ける。

「和菓子をアフリカに広めるための方策を探究テーマにした生徒がいました。アフリカでも作れるようキャッサバとひよこ豆で柏餅を作り、まずそれを宝塚市にあるアフリカ料理店に、次にコンゴ民主共和国領事館に持ち込み、領事の方に食べてもらったり、アフリカで広めるためのアイデアをプレゼンしたりしました。特に学校から指示をしたわけではなく、自分で考えて行動したんです。あの行動力にはビックリしましたね」

同校では授業以外の探究プロジェクト・ゼミはすべて課外に設定し、希望する生徒が参加する形式を取っている。「探究活動は、全員で学ぶ基本的なスキルの土台の上に成り立つもの。意欲と好奇心をもった生徒にはとことん付き合うべき」と、同校の探究活動を取り仕切る道北秀寿教頭は言う。

「『自分でしたいことを見つけたからやりたくなるのが探究。やる気になった生徒は自ら考え、どんどん行動を起こしていく。我々教員は生徒の心に火をつけることが仕事だ』と道北が言うんです。和菓子の探究をした生徒も、和菓子が好きでその魅力を広めたいからこそ、あの行動力を見せてくれたのだと思います」

これらの今岡先生の言葉から、生徒たちが「好き」や「気になる」という純粋な気持ちを原動力に学びを突き詰めていく様子が目に浮かぶようだ。

国や県のプロジェクトの採択校に。より進化する探究活動

同校は2024年度、文部科学省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」、及び兵庫県の「HYOGOグローバルリーダー育成プロジェクト~ひょうごリーダーハイスクール~」に採択された。これは文理横断的・探究的な学びに力を入れる学校を対象とするもので、補助金が支給される。「本校は『データサイエンスを基盤とした文理融合探究人材の育成』を掲げ、カリキュラムの変更など教育システムの改革を行います」と今岡先生は熱く語る。

「新たな探究活動として、大阪大学大学院情報科学研究科によるAIに関する出前授業や慶應義塾大学大学院ソーシャルデザインマネージメント研究科とのコラボ講座を進めています。情報工学というと理系のイメージが強いですが、文系・理系問わず、どちらの生徒も参加しやすい内容にしたいと考えています」

長年培ってきた探究活動を、今まで以上に貪欲に進化させようとする同校。これも探究活動が生徒たちの進路選択の重要な指針になると考えるからこそ。

「やはり自分の興味に気付くことで、進路選択に迷いがなくなります。地価モデルの探究に関わった生徒たちは、経済学部への進学を希望しています。そして、本校での探究活動を大学進学という人生の大きな選択に活かしてくれているのがとてもうれしいです。大学入学後の活躍も楽しみですね」と今岡先生は笑顔を見せる。

探究活動の成果を活かして、大学の総合型・学校推薦型選抜に挑戦する生徒も多数いる。現高3生はコンテスト入賞者も多く、2025年大学入試での躍進に期待が高まる。

中だるみなし! 中3で高い自己肯定感・自己効力感を示す

続けて、今岡先生は同校で毎年集計している生徒アンケートの結果について言及する。

「本校では毎年、生徒アンケートの分析を、社会心理学を専門とする大学の先生にお願いしています。その分析によると、本校の中3生の自己肯定感や自己効力感の値は非常に高いことが分かりました。普通、中高一貫校の場合は中2から中3にかけて意欲が低下する「中だるみ」が起こると言われます。しかし、本校では逆のことが起こっています。学校行事、特に中3の皆で作る研修旅行の影響が大きいのではないかと考えています」

同校では中学の探究活動の総まとめとして、皆で作る研修旅行を中3で設定している。これは文字通り、研修旅行の企画を生徒が行うもので、一人ひとりが自分の行きたい研修旅行プランを考え、プレゼン大会を勝ち抜いたいくつかの案が実際に研修旅行として催行される。

「プレゼンの結果、プランが採用された人は、集まってくれた参加者たちと共に半年間プランをブラッシュアップして、実際に自分たちで計画した研修旅行に出かけます。2024年度で4回目、6つのコースに出かけます。自分たちで考えたことが実現するぞという実感が、自己肯定感や自己効力感の向上に一役買っているのではないでしょうか。それを今できているのが、本校の強みだと感じています」

<取材を終えて>

今岡先生は進学相談会などでよく保護者から、「うちの子はいろんなことに積極的じゃないので探究活動も参加するかどうか」といった質問を受けるそうだ。その時には次のように答えているという。

「本校では中3の皆で作る研修旅行で必ず探究活動に関わらないといけません。生徒たちもそれを分かっているし、グローバル探究EXPOなど探究活動に熱心に取り組んでいる生徒と接する機会も多くあるので、自然と探究活動に向き合うようになります。担任団は基本的に6年間持ち上がりです。授業中はもちろん、休み時間や放課後など、生徒を毎日観察する中で、それぞれがどんなことに興味を持っているかを把握しています。高1の探究論文でテーマに悩んでいる子には、アドバイスすることもありますよ。探究のテーマはアカデミックな内容じゃないとダメと思われがちですが、興味がある身近なテーマこそ我々は探究してほしいと思っています。部活動やボカロ、アニメ、ゲームなどをテーマにする生徒もいますよ」

人前に出るのが苦手な生徒も、知りたいと思うことを一生懸命突き詰めていく内に「伝えたい」気持ちが生まれ、伝えたいと思うようになった時にプレゼンが上手になるという。

生徒に探究活動を押しつけるのではなく、無理なく探究活動に興味が向くような仕掛けを適切なタイミングで設定する同校。20年以上前から探究活動を進めてきた一日の長がここにある。今後も同校の躍進が楽しみでならない。

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