スクール特集(園田学園中学校の特色のある教育 #9)
最新の教育システムに対応したICT環境がコロナ禍の学習活動をスムーズに
コロナウイルス感染拡大に伴う全国一斉休校期間中、園田学園で行ったオンライン学習体制、そしてウィズコロナ時代の学校生活のあり方、今後の取り組みについて教頭である繁明彦先生に話を聞いた。
全国一斉休校が決まるまでの動き
コロナウイルス感染拡大を受け3密を避けるためのさまざまな変更が余儀なくされた3月、生徒数の多い高校では、やむなく保護者の参列を控えていただき、校内放送での卒業式実施となりました。中学校は広くて風通しの良いサブホールに会場を変更し、生徒一人につき保護者の参列は各一名に限定して、マスク着用を徹底して実施しました。
その後、春休みに入り、3月中はマスクの着用や換気を徹底しながら部活動を行なっていましたが、高校、中学校の入学式はそれぞれ卒業式と同様の体制で実施し、4月7日の緊急事態宣言による全国一斉休校を受け、4月8日より本校も休校する運びとなりました。
高校、中学ともにタブレットを一人一台支給してICT 教育に力を注いでいましたし、教科書も3月終わり頃から4月初旬にかけて既に配布済でしたので、オンライン学習への移行はスムーズでしたね。
新入生のタブレットも例年4月初めに配布しており、準備はしていたのですが、感染拡大の影響で到着に遅れが出てしまいました。そこで、保護者や各自で所有する携帯電話を利用し、アプリをインストールしてもらうということで当面の対応としました。
新入生以外は日頃からタブレットを使用していますので、Classiとロイロノートを活用して、毎朝8時半に健康状態の確認を行い、担任から学年主任、教頭へとエスカレーションで報告が上がるようにしていました。
▶︎教頭 繁明彦先生
休校期間中のオンライン学習の実施状況
まずは各教科10分程度の動画を作成し毎日配信。
休校期間中、必要に応じて3回ほど副教材やプリントなどを郵送しました。
新入生へのタブレット配布は5月の連休明けに登校日を設け、説明とともに行いました。一部、遠方から通う登校が困難な生徒には、直接自宅に届けたり、郵送したりして対応。
中学2・3年生、高校2・3年生には全てロイロノートでオンライン説明を行い、5月11日からはZoomでの朝礼とオンライン授業も開始することができました。
休校中の学校や企業が一斉にZoomを活用することで、繋がりにくい時間帯が発生するとの情報があったため、その時間帯をなるべく外し、9時〜、13時半〜、14時半〜の1日3回各40分の授業を5月中は毎日実施しました。
ライブでの授業がない時間帯はそれぞれ課題学習とし、授業進度に問題が出ることもありませんでしたね。
5月25日の全国都道府県における緊急事態宣言解除を受け、6月からは分散登校を開始。1クラス20名以下の中学生は、毎日午前中のみの3時間授業に、高校生は週4日、午前と午後にクラスを半分に分けて4時間授業を行うことからスタートしました。
6月15日からは時差登校に切り替え、40分授業を6時間行っています。1週目のみお弁当の持参をお願いしましたが、2週目からは食堂も感染防止策を講じた上で再開しました。
本校では兵庫県内の公立校より2週間遅らせ、6月最終週より通常通りの授業を開始。部活動は対外試合などがほぼ中止になっていますが、6月から再開しています。
休校期間を鑑みて、2020年度の1学期は8月7日まで延長し、夏休みを12日間に短縮、8月20日から2学期を開始する予定です。
校内でのコロナウイルス感染拡大防止策
学校再開にあたって新たに導入したサーモグラフィーカメラで、登校時に発熱者がいないかしっかりとチェックしています。暑い時期ですし稀に体温が上がり、赤く反応を示す場合もありますので、玄関近くに設けた待機教室で改めて検温し、それでも体温が37.5度を超えている場合は大事をとって帰宅させ、自宅で様子を見るようにしています。
教室では常時、窓を開けて換気を徹底。もちろん前後の入り口ドアも開放しています。中学生は1クラスが20名弱ともともと少人数ではありますが、机の配置は広めに、各自のロッカーの間隔も広めにとって、密にならないよう注意しています。
廊下に設置されたウォータークーラーは直接の使用を禁止して、水筒などに入れるように指導し、教員による除菌清掃を毎日2回実施しています。
体育の授業は体育館をなるべく使用せず、マスクは自由着用とし、ソーシャルディスタンスを守って実施しています。体育館を使用する場合は、一人ひとりの間隔を十分に開けて、換気に気を配っています。
図書室を利用する際は手洗いを徹底。読みたい本や借りたい本は司書の先生に申告してから手に取るという方針をとっています。さらに、閲覧テーブルには透明の衝立を立てて、飛沫感染防止策をとっています。返却された本は教員が消毒、乾燥を行った上で、元の棚に戻すようにしています。
食堂も再開していますが、以前よりは利用者が減っている状況です。自宅からお弁当を持参し、教室で黙々と食べる姿が多く見られるようになりました。カウンターやレジ、テーブルにはビニールシートで飛沫感染防止策を図り、床にはソーシャルディスタンスを守るためのガイドマークも貼っています。さまざまなデザインの感染予防の注意喚起ポスターは生徒たちが作成したもので、学校全体として、ウィズコロナの学校生活をなんとか快適に過ごせるように取り組んでいるところです。
オンライン学習の実施で明らかになった課題と今後の展望
実技を伴う授業ができなかったこともあり、4月のシラバスをいま見直して調整し、作り直しているところですが、授業に関しては目立った遅れはありません。以前よりICT教育に力を注いで設備を整え、タブレットも支給していたことが功を奏しました。
生徒から学校へ電話での問い合わせなども特にないまま、ロイロノートを上手に活用して質問などをクリアにして自学自習に励んでくれました。新入生以外は説明などもすべてオンラインで行いましたので、生徒の順応性の高さには感心させられましたね。
普段、学校に来ることが困難だった生徒も、Zoomによるオンライン授業なら休むことなく受けることができ、ICT教育の可能性を見出すことができました。
今後は発熱欠席者などにもZoomを使った放課後補習などを実施していくなど、新たな活用方法があると気づかされました。
保護者の皆様もClassiや生徒のロイロノートを活用していただき、休校期間中も相互コミュニケーションを円滑に図ることができました。
教員も基本的にはリモートワークで出勤日を決めて出勤するようにし、教職員同志のコミュニケーションもメールを活用し、連絡体制を整えました。
現在は生徒会の会議もZoomで行うなど、ウィズコロナの学校生活ではICTの活用がさらに不可欠なものとなっていきそうです。
本年度の学校行事は残念ながら例年通りというわけにはいかず、高校3年生のハワイへの修学旅行、中学3年生のニュージーランド研修の中止・行先変更が決定しています。
9月の文化祭も中止となりましたが、中学3年生と高校3年生の保護者のみ参加可能な文化部発表会は50%の定員で、時間もゆったりと取って換気に注意しながら実施する予定です。
また、体育祭は午前中のみの開催に縮小。生徒会たっての希望により、本校の伝統的な種目のみを厳選して実施する予定です。
来年度の特色入試、英語入試について
園田学園では昨年から自己推薦型の特色入試を実施しています。今年度の応募があった3名全員が入学しております。児童会活動、地域活動、文化、スポーツ、芸術などの分野で優れた成果を修めている児童が対象です。志望理由書に小学校で取り組んできたことを書いて提出していただき、面接と作文、基礎学力テスト(国語・算数)の結果を総合的に判断して、合否が決定します。この特色入試は来年度も実施します。
また、A日程(2021年1月16日実施予定)において、国語、算数、英語の3科目のうちから2科目の選択受験に変更になります。小学校の英語教育は2018年度から移行措置がとられ、2020年度から全面実施となりました。これを機に、本校では英語を入試科目として導入することになりました。B日程、C日程は従来通り、国語と算数の2科目になります。詳しくはホームページを参照ください。
<取材を終えて>
園田学園がこれまで積極的に取り組んできた環境整備、ICT教育の成果が、コロナ禍の思わぬ非常事態下で明らかになったようだ。オンライン学習の有用性を強く実感することができ、今後もますますタブレットを活用した能動的で効率的な授業展開が期待される。文武両道を掲げる同校では、部活動で活躍する生徒も多いが、残念ながら対外試合や学校行事などは例年通りとはいかない。しかし、できる方向性を探りながら、ウィズコロナの学校生活を前向きに送ろうと明るく振る舞う生徒たちの姿が非常に印象的だった。
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