スクール特集(園田学園中学校の特色のある教育 #5)
変わりゆく女子教育。伝統と新たなニーズで社会貢献ができる人材育成を目指す!
女子教育80年の実績をもとに、さらに教育を発展させている園田学園中学校。生徒の新しいニーズに対応し、社会に貢献できる優秀な人材の育成を目指しています。その教育の特色とは?
2018年に創立80周年を迎える園田学園中学校。創立以来、豊かな人間性を備えた女性を育成し、社会に送り出してきました。
グローバル化の進む現代、女性の生き方は大きく変化し、専門的な分野での活躍や、国際社会での活躍をめざす女性が増えています。園田学園中学校では、女子教育80年の実績をもとに、さらに教育を発展させ、生徒の新しいニーズに対応し、社会に貢献できる優秀な人材の育成をめざしています。
園田学園中学校の教育の特色について、校長先生にお話をうかがいました。
園田学園中学校高等学校 校長 石井 稔先生
建学の精神「捨我精進(しゃがしょうじん)」
本校の建学の精神は、「捨我精進」です。これは仏教用語ではありません。「捨我」とは、わがままを捨て、自己中心にならず、人を愛し社会のために自分の使命を果たすこと。「精進」とは、幸福な世の中をつくるため勇気を持って挑戦すること。――「捨我精進」には、こうした意味が込められています。
この建学の精神は、いつの時代を生きる人間にも、最も大切なものです。生徒たちが中高6年間を過ごし、本校を卒業して10年後、20代後半を迎えたころ、社会のため、人のために貢献する女性に成長していてほしいと願います。高校卒業後の10年間は、勉学や仕事で悩んだり、生きる道について迷ったりすることがあるでしょう。それを乗り越え、自立して社会に尽くす人になれるよう、その基礎を本校でしっかりと育みたいと思います。中学ではそのために、体験活動による学びを重視します。
体験により学びを深める
体験活動を通した学びは、各教科で行っています。たとえば、3年生の社会では、ディベートに取り組みます。「幼稚園で動物を飼育することについて」「安楽死」「死刑制度」など、時代に即したさまざまなテーマを設定します。こうした社会的なテーマについて、肯定派・否定派それぞれの役割に分かれ、グループ対抗でディベートを行います。
まず、生徒はテーマについて調べ学習を行います。否定派・肯定派それぞれ自分たちの主張の根拠となる資料を集め、論理を組み立てます。動物の飼育の歴史、幼稚園教育など、生徒たちは相手を論破するために、幅広く調べます。自ら調べる過程で、考えが深まり、知識も増えます。それは教科書の域を越えた学びです。
「世界遺産」を別荘に!
こうした体験活動を取り入れた授業では、生徒が興味・関心をもって取り組めるよう、教師はいろいろな工夫を凝らします。1年生の社会ではディベートのほか、「世界遺産」をテーマに、グループで調べ学習とプレゼンテーションに取り組みます。
そのさい教師は、「この世界遺産を、別荘として買ってください」という設定で調べるよう生徒に言います。そこで、生徒たちはグループごとに、「世界遺産」に認定されている場所を選び、どうしたらそこが別荘として買ってもらえるか、みんなで知恵を絞ります。
こうした形で条件を設定することにより、「世界遺産」の基本的な紹介にとどまらず、自分たちの視点や切り口が大いに必要になります。調べる内容も、現地の自然環境、生活環境、政治・経済など広まります。知的で楽しい学びであり、生徒の意欲を引き出すことができます。
中学3学年縦割りの「ファミリー」
体験活動によって、生徒同士のかかわりが活発になります。生徒たちはともに楽しく学んでいます。このように体験活動が展開できるのが少人数教育の利点です。体験的な学習は、少人数教育でないと十分な効果が得られません。少人数の利点を生かすことで、生徒全員が友だち同士になりグループでの学習がよりスムーズに進みます。また教師もきめ細かな指導することができます。
学年縦割りの「ファミリー」も、少人数の学校ならではの活動です。中学3学年の縦割りでグループをつくり、3年生がリーダーとなって文化祭や体育祭など行事の準備を行います。水泳講習も「ファミリー」で、3年生が中心になって練習します。
「ファミリー」によって全校生徒が縦のつながりをつくり、リーダーシップを養う。文化祭や体育祭などを先輩から後輩へ受け継ぐこともできます。みんな仲がよく、協力して取り組んでいます。
3年生ニュージーランド研修
3年生全員で臨むニュージーランド研修は、本校の体験活動の目玉です。11月に約10日間、ニュージーランドの園田学園の施設SCC(そのだクライストチャーチキャンパス)に滞在し、英語学習はじめ、さまざまな異文化体験を行います。
SCCは園田学園女子大学や園田学園高校の生徒なども研修施設として利用しています。広大なキャンパスで自然豊か。ここで個室に宿泊し、寮生活を体験します。みんなで買い物に出て料理をしたり、姉妹校に通ったりして、楽しく安全に過ごします。親元を離れ、自立心を養う機会にもなっています。
姉妹校の女子校では、数学や体育などさまざまな授業を現地生徒といっしょに受けます。日本語を学習している現地生徒がバディとなってサポートしてくれます。初めは恐る恐る授業を受けていた生徒たちも、すぐにみんなと仲良くなりますよ。言葉がすべて通じなくても、心の交流ができるのです。若さの特権ですね。
研修中は、日本文化を紹介する英語プレゼンテーション、小学校訪問、ニュージーランドの歴史学習、農家に滞在するファームステイ、自然に触れるアクティビティ、市内観光など、たいへん充実した国際交流・異文化体験プログラムとなっています。
さらに、園田学園高校ではハワイ修学旅行、希望者によるニュージーランドSCC短期留学を実施します。
体験を重視した英語・国際教育
体験活動を伴った英語・国際教育は、中学から力を入れています。ニュージーランド研修をはじめ、英語イマージョン授業として、家庭科の調理実習では、家庭科の教師とネイティブ教師がペアになり、英語による授業を行います。レシピも英語のみです。朝のホームルームの時間もミニ英会話を行います。
毎年12月の英語祭は中学3学年がそろい、学年ごとに出し物を披露します。1年生は英語劇、2年生は世界の国々を調べ、英語プレゼンテーション、3年生はニュージーランド研修について英語プレゼンテーション。生徒たちはパワーポイントでまとめ、動画も作成したりして、上手に発表します。
こうした体験活動も、少人数の学校だからこそできることです。教師が一人ひとりに丁寧に指導でき、完成度の高い取り組みとなります。生徒たちは意欲をもって活動し、達成感を得ています。
新校舎を建設
現在、校舎の建て替えが進んでいます。新しく建設される6階建ての校舎は耐震設計。地中深くに杭を打ち、堅牢です。
教室は南向きです。女子生徒のための校舎を意識し、教室はフローリングにするなど木の温もりのある校舎になります。最上階には茶室などを設置します。理科の実験室や音楽室、美術室などの特別教室も新しくなります。
教室棟の完成は2017年3月の予定で、2017年度入学生より新校舎で学ぶことになります。
新校舎ではICT環境も完備します。全館ネットワークをつなぎ、どこでもインターネットに接続できます。全教室にプロジェクターも設置します。2017年の校舎完成に合わせて、中学1年生・2年生から順次タブレット端末を所有し、各教科の授業で活用します。
ICT教育を推進
ICT教育は、幅広い可能性を持っています。たとえば、教師が練習問題や教科書に関連した問いなどを、生徒のタブレット端末に配信します。生徒はそれを解き、タブレット端末から教師に送ります。教師は全員の答えをプロジェクターにアップし、生徒たちの解答を教材として取り入れ、授業を進めることができます。板書も、これまでのように黒板に書くのではなく、インターネットでの配信が可能になります。
プリント配付の手間や板書の時間を節約することで、時間のゆとりが生まれます。それを効果的に使いたいと思います。たとえば、繰り返しの学習を行ったり、練習問題は基礎から応用レベルまで分けて設定したり。これによって、一人ひとりが自分の力に応じて取り組むことができます。こうした学習を、家庭でもできるようにします。調べ学習にもインターネットを活用します。
2020年から開始する大学新入試では、コンピュータを活用した受験も行われるようになります。新校舎では、こうした流れにも対応できるICT教育を行っていきます。
「女性学」
ICT教育を推進する一方で、本校の教育の特色の一つである「女性学」も大切にします。豊かな知性と教養、美しい品格を持った女性が本校のめざす女性像です。そこで、総合的な学習の時間を利用し、中高6年間を通して「女性学」を行っています。
中学では、やはり体験活動を中心に学びます。1年生はお辞儀や言葉遣いなどのマナーと茶道、2年生は華道・短歌・俳句、3年生は着付け・書の作法。高校ではキャリア教育も意識して、スマートフォンを含む公共の場でのマナー、敬語の使い分け、コミュニケーションマナー、進路適性検査など。
このように、「女性学」ではさまざまな日本の伝統文化やマナーなど一通りを、プロの講師から学ぶことができます。生徒たちは、6年間で立ち居振る舞いが端正になります。それは一生の宝です。茶道とお辞儀のマナーなど、一つひとつが関連し合っていることに気づく生徒もいます。とても大切な気づきです。今後、さらに「女性学」を発展させていきたいと考えています。
本校は少人数教育を行う学校として、これからも体験活動を通した学びを重視します。そして、英語・国際教育、ICT教育、「女性学」など、生徒の将来を見据えた教育を推進していきます。
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