スクール特集(箕面自由学園中学校の特色のある教育 #3)
難関国公立大学現役合格を目指す新コース 『理数探究コースS』を2025年度新設!
2025年度より新3コース制を導入する箕面自由学園中学校。新設の『理数探究コースS』では、国公立・難関私立大学への現役進学率が80%を超えるコース『SS特進』『S特進』への進学をめざす。2人の先生に話を聞いた。
『Design Yourself』、自分の人生は自分でデザインする、を教育目標に掲げる箕面自由学園。その目標を達成するために、生徒たちが自分の進みたい方向を探る多彩な体験を用意し、確かな学力を築く手厚いサポート体制を整備する。充実した教育環境の中、高校の国公立大学合格実績も右肩上がりで、特に『SS特進』『S特進』の合格実績は目覚ましい伸びを見せる。
2025年度、この2コースへの進学を目標とする『理数探究S』を中学校に新設。それに伴い『グローバル』を『文理探究』と改名し、『理数探究S』『理数探究』『文理探究』の新3コース制とする。新コースの特長と共に、教育にかける思いを校長の田中良樹先生と教頭の西森利彦先生に語ってもらった。
▶︎校長 田中良樹先生
▶︎教頭 西森利彦先生
難関国公立・私立大学への合格者数が激増
近年、難関大学への合格実績を伸ばす箕面自由学園高等学校。国公立大学への合格者数は2020年度の72名から2024年度は159名と倍以上に伸び、かつ152名が現役生と高い現役合格率を誇る。関関同立に至っては、合格者数が2020年の141名から472名と3倍以上になった。
もちろん、この躍進には理由がある。まず、2024年入試は最上位コースとして作られた『SS特進』の一期生が初めてのぞんだ大学入試であったことが挙げられる。ただ、どこの学校でもコース新設の年に入学した一期生は、入学当初の偏差値のバラつきが出ることが多い。同校でも「皆が皆トップ層の子たちというわけではなかった」という。しかし、このような目覚ましい合格実績を上げられた理由について田中校長が言及するのは「目的意識の醸成」だ。
「本校のテーマは『Design Yourself』。自分の人生を自分でデザインできる人を育てることを目標にしています。生徒が自分の人生を自分でデザインしたいと思えば、まず自分は何がしたいのかを探り始め、それが見つかれば、そのためにどういう進路を選択する必要があるのか、どれくらい勉強しないといけないかを考え、自分の目標に向かって主体的に勉強し出すようになります。この目的意識を醸成することが学校の務め。校長講話や10回以上にも及ぶ個人面談、放課後のデザインタイムを通じて、常に働きかけた結果、生徒たちがやりたいことを見つけ、自分の道を切り開いていきました。」(田中校長)
田中校長の口癖は「君の東大を探せ」だという。生徒の内に確固たる目標を育むと共に、全国から高い教科指導力を持つ教員を集めて授業の質を高める、「朝活」と称して朝7時から自習できる体制を整える、放課後のデザインタイムでレベル別の学力向上講座や企業とも連携する探究活動などを用意する、など学習面での徹底的なサポートを提供。これらがうまくかみ合った結果が、近年の大学合格実績に表われたのだ。
高い合格実績を誇る高校『SS特進』『S特進』につながる『理数探究S』
ここ数年の大学合格実績の伸びは、高校3年間で難関国公立大学を十分に目指せる指導体制が同校に整っていることの証明だと言えよう。そして、2025年度、レベルが格段に上がった高校への架け橋となる新コースが中学に新設される。
「高校『SS特進』『S特進』の80%以上が、国公立大学や関関同立に進学しています。これらのコースには、現在も中学からの内進生はいますが、まだ少ない。中学校からの内進生が『SS特進』『S特進』でもコアの存在になれるように、より高い学力を育むことを目的とする新コース『理数探究S』を立ち上げることにしました」と西森教頭。
『理数探究S』の新設と共に、従来の『グローバル』は『文理探究』にコース名を変更。『理数探究S』『理数探究』『文理探究』の新3コース制となる。
英検2級対策・理系最上位を目指す数学演習など、特別な放課後学習を設ける
『理数探究S』の特長としてあげられるのが、7時間目のJタイムが高校での学力伸張を意識したものであること。Jタイムとは平日の7時間目に設けられた学習力や教養を身につける講座で、『学びを楽しくする』がコンセプト。しかし、『理数探究S』では英検対策S・英語演習S・数学演習S(2コマ)のコース特別講座が設けられ、ハイレベルな学力養成を視野に入れる。
「英検対策Sでは中3時の英検二級取得を目標に指導します。これは、『SS特進』の外部入学生の英検二級取得率が非常に高く、そのレベルについて行けるようにとの考えから設定しました。英語演習S・数学演習Sでは授業で学んだことを定着させ、実践力へと高める演習中心の講座です。両講座とも『SS特進』『S特進』の指導に関わりを持つ教員が、高校で求められるレベルから逆算した指導をする予定です」(西森教頭)。
高校で理系のトップクラスに入れるかは「数学の基礎学力が中学時代に確立できているかが非常に重要」と言われている。西森教頭は「だからこそ、Jタイムに数学演習を2コマ設定しています。3年間で数学の基礎を盤石なものとし、高校での伸びにつなげていきたいですね」と意気込みを語る。
また、『理数探究S』限定のJタイムでは学力向上を目指した講座だけでなく、『SS特進』『S特進』の生徒との合同講座も積極的に設けていく予定だという。
「『SS特進』『S特進』の先輩というロールモデルとの交流によって、高校での目標にすべき位置が明確になります。それが学びへのモチベーションにつながり、中高一貫校でありがちな中だるみの防止にも効果があるのではと期待しています」(西森教頭)
技術立国の日本を支える技術者を育てたい
同校では多様な価値観を持った生徒が集うほうが様々な能力を伸ばしていきやすいという考えのもと、コース別のクラス編成はしていない。代わりに、授業をホームクラス別・コース別・習熟度別の3つに分けて実施。生徒たちはコース別・習熟度別の授業をそれぞれに応じたクラスへ移動して受ける。
この授業スタイルは新3コース制導入後も継続。『理数探究S』では、数学の習熟度別授業は3クラスあるうち、一番上のクラスで受けることが決まっている。また、週4コマあるコース別授業は、理科と数学(各2コマ)を『理数探究』の生徒共に受ける。理科では科学実験を、数学は統計学や論理パズルなど、数学的手法を用いた探究的な学びに取り組むそうだ。
実験を始めとする理科教育について、田中校長は「2025年度より科学教育応援活動を行う学外団体と協働し、より一層の充実を図る予定だ」と語る。
「本学園では理科好きを育て、考える経験を積む場として小中高を通して理科実験に力を入れています。失敗から学べることが実験の良さです。今までは各教員が自らの専門性と経験を活かし実験カリキュラムを組み立ててきました。しかし、内にいると見えない所もあります。外部のプロの目から見て無駄がないかをチェックしてもらい、より現代的なニーズに沿うカリキュラムにブラッシュアップしていきたいと考えています。」(田中校長)
これも『理数探究S』を『SS特進』『S特進』につなげる学力を養うためだけでなく、「技術立国の日本がもう一度復活するための人材を作るコースとしたい」という思いの表れでもある。
「偏差値が高いコースを作るとなれば、医学部進学を目指すコースを作るのが定石です。しかし、学力が高くても医師に向いていない子もいます。だから本校では『理数探究S』を、6年間を通して理科と数学の足腰を鍛えて、医学部だけでなく、理学部や工学部など日本の土台となる技術者を育てる学部を目指せるコースにしたいのです。高校では3年間で東大・京大・阪大の現役合格を目指せるレベルまで来ました。6年間あれば、学力だけにとどまらず、目標設定、そして実行力を身につけることができるのではないかと思います。」(田中校長)
『文理探究』では高校での総合型選抜のノウハウを活かした授業を展開
『理数探究S』の新設と共に、2025年度から『グローバル』も『文理探究』へとコース名を変更する。『文理探究』でも、高校からの逆算で学習内容に磨きをかけると西森教頭。
「高校では探究活動の学びを使い、総合型選抜で大学入試を突破する生徒も増えてきました。このノウハウを持った教員が中学の指導にも入っています。中学校から探究の手法を伝え、自分のやりたいことを将来に繋げていける学びを『文理探究』を中心に展開していきます」
『文理探究』のコース別授業では、英語・国語に加えて数学を設置、文理融合人材の育成をめざす。英語はネイティブ教員と日本人教員によるTT指導のもと、「英語で学ぶ」活動を展開。国語はコース目標である『表現のエキスパートになること』を軸に、プレゼンなどあらゆるアウトプット活動の経験を積み、文章を書く力や調べる力などを、また数学では数学的な思考力・論理的思考力を身に付けられる授業を行う。
社会に触れる多くの機会を提供し、目的意識の醸成を図る
高校では生徒の目的意識の醸成に注力していることは前述した。それでは中学校ではどうか? 西森教頭は次のように話す。
「学校の中でずっと勉強していれば目的意識が醸成されるわけではありません。社会に出て行って、今現実に起こっている物事に触れることをきっかけに、問題意識を持ち、それが目的意識につながっていくのではないでしょうか。そう考え、特に中学校では社会との接点を持てる機会をたくさん用意しています」
その機会のひとつが総合的な学習の時間を使って行う探究活動『IU』だ。同時間では3年間を通して、SDGsをテーマに様々な社会課題の解決に取り組む。
「調べ学習をするだけでなく、実際に社会課題に取り組んでいる土地を訪ねて、活動している人たちに話を聞き、体験もします。3年生では企業から出された課題に対して、新たな視点での解決法を提案する企業インターンワークも設定しています。これらの活動を通じて社会に目を向けることは、自分の将来像を描くことに役立ってくれるでしょう」(西森教頭)
また授業以外にも、留学生との交流や、異国文化が根付く様々な街を訪れる社会探求・ボランティア同好会の活動など、視野を広げる様々な経験を設定する。目的意識を持ち自ら頑張れる子を育てる教育は、中学でも健在だ。
<取材を終えて>
雑誌の中高一貫校特集や塾関係者の関西中学受験注目の学校などのコラムで、箕面自由学園中学校の名前を見ることが最近増えた。注目度が高まっている最中、素晴らしい2024年大学合格実績を打ち出し、より高みを目指すコースの新設である。多くの人の関心を集めることだろう。
ただ同校の魅力は、高校の3年間で難関大学に合格できる学力を付けさせてくれることだけにあるのではない。むしろ、生徒がなりたい自分を描き、それに向かって走れるきっかけを作ることに尽力する教員たちの熱い思いにこそ魅力があると取材を通して感じた。新3コース制を通して、子どもたちがどのように成長していくか。今後も注目したい。