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近畿大学附属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(近畿大学附属中学校の特色のある教育 #6)

人工知能型教材・キュビナ導入に見る、自立した学習者の育成を目指す教育。

2019年4月より、中学1~3年生の全コースでAI型タブレット教材・キュビナが数学の授業に取り入れられた。関西でいち早くiPad導入を実施し、ICT教育を実践してきた同校が、新しい教材で目指す教育とは?

キュビナとは、株式会社COMPASSが提供する数学学習用AI型教材。解答の正誤や解くためにかかった時間をAIが分析し、生徒一人ひとりの理解度を把握。解くべき問題へ誘導してくれるため、効率的な学習が可能となる。この新しい教材の導入を決めた理由や一学期を通して使用してみての手ごたえについて話を聞いた。

教育改革推進室主任・増田憲昭先生のお話

授業の効率化を目的とするキュビナの導入

「現在、総合的な学習の時間(以下総合)では英語四技能を充実させるため、英会話を行っています。しかし、新しい指導要領のもと、英会話はやはり英語科の授業内で行い、総合の授業では探究的な学びを新たに導入することになりました。1週間の授業数は決まっていますので、英会話で英語の授業数が増える分、どこかの教科が減らさなければならない。そこで、数学科の授業を減らす決断をしました」と増田先生。

同校はハイスピードで授業を先取りしていくことはしないが、それでも中学3年時には高校の内容を前倒しで学び、一般の公立中学校よりも授業進度は早い。通常より早い授業進度はそのままに、少ない授業数でどう学びを深めていくかと考えた時に、ドリルトレーニングなど反復練習を効率的に行うことが一番の近道になるだろうと考えたそうだ。そこでたどり着いたのが、キュビナである。

▶︎教育改革推進室主任・増田憲昭先生

AIならではの個別最適化された反復演習と、ストレスフリーな使い心地

キュビナでは、問題に対し正誤のみならず、間違い方や解くのにかかった時間などから、AIが一人ひとりの理解できていない点を分析。その分析に基づいて、次に出題される問題が変わるという仕組みだ。間違いの原因が過去の単元や前の学年の同分野にあると判断されるとそこまで遡って出題される。また、正解するまで類題が出題されるため、取りこぼしなく進めることができる。

そして、正誤が即時判定され、解説もすぐに表示されるというのもポイントだ。どうしても紙の問題集の場合は、まとめて丸付けをすることが多く、問題が進んでから丸付けをすると、間違っていても気になりにくくなる。しかし、キュビナでは即時に正誤が分かることで、生徒はなぜ間違ったんだろう? と疑問を感じるため、間違いの原因や正しい解き方が頭に入りやすくなるという寸法だ。

また、タブレット上でペンを使って、ノートに書くかのように手書きで学習を進めていける操作性の良さも大きな特長である。余白に途中計算も行うことができ、数式もタッチパネル方式ではなく、手書き入力が可能。字が多少荒っぽくても認識してくれ、タブレットの中で学習が完結するという手軽さは、集中力を保ったまま学習を進める上で大事な要素である。

生徒だけでなく、教員側の利点も多い。管理画面で、正答率やどの問題を行ったかを把握できるだけでなく、かかった時間、どんな字で答えを書いたかまでを確認でき、生徒一人ひとりの習熟度を一目で把握することができる。キュビナでの演習時間には生徒同士で教え合う姿も見られ、その間に教員はなかなか進められない生徒のフォローに回ることができるのだ。

数学力の底上げへの手ごたえと、今後の展開

導入に当たっては、数学科教員全体で統一した使い方を決めずにスタートしたという。使い方を決めてしまうと、教材としての広がりが無くなってしまうというのがその理由だ。現在、各教員が各々の考えの元にキュビナを授業に取り入れ、生徒が数学の力をつけるためにどのように使うのがいいのかを模索。同校ならではのスタイルを作り上げている最中である。

増田先生の授業では、単元のレクチャー後に問題演習をキュビナで行うという流れで、1学期間、試行してきた。今まで50点も取ったことがないのに、テスト前日にキュビナで演習を進めただけで、中間テストで70点を取ることができた生徒もいたことから、しっかりキュビナを使いこなせれば結果は付いてくる、全体の数学力の底上げに繋がるという手ごたえを感じているそうだ。

「1学期の経験を踏まえ、2学期はもっとチャレンジしていきたいと思っています。数学の知識・技能分野はレクチャーの時間を短くし、キュビナの時間をふんだんに取った方が生徒に数学の力を付けさせるのに良いのではないかと感じています。知識・技能分野の演習をキュビナで効率的に行い、余裕のできた時間で、人間の目で見る方が適した証明問題や表現に揺れがあるような問題に時間を割いて鍛えたいと考えています」

入試企画部長・芳竹良彰先生のお話

ICT導入の根底にある、自立した学習者を育成への思い

これまでの授業では、一方的に教員の話を聞いているのが1時間の授業になってしまう生徒もいました。それをどういう風にしたら、生徒たちが能動的に学べるか、今まで数学が嫌いだった生徒に楽しく学んで、また興味・関心を持たせるかということを考えた結果が、ICTやキュビナのような教材の導入に繋がっています。

ICTを導入することにより、分からないことは分からないと発信でき、分かるものについては、より深く色々な方法で発信できるようになりました。これを機に、今までは受動的であった生徒も、一歩踏み出して、自分から学んでいくという姿に変わっていってほしい。

学びは一生続きます。大学入学後も社会人になっても、本当に学びを楽しめ、ずっと自分から学び続けられる人を育てていきたい。どのような環境にあっても、精いっぱい自分の目標に向かって頑張っていける力を、この多感な時期に身に着けさせてあげたいと思います。

ICTを活用することで、基礎学力を効率的に身に着けることができれば、思考力や発信力の育成に時間を充てることができます。もちろん、すべてがICTで完結するわけではないですし、iPadがあればそれで全部出来てしまうというわけではありません。ICTを効率よく活用することで、余裕のできた時間を生徒同士のディスカッションや、理解し表現していく力、人間の手でやらないといけない作業に充てていく。

当校は大学附属校ですので、ある程度、大学受験というものに縛られない状況で、本当に生徒に身に着けさせなければいけない学びの力やその方法を探っていけるという環境もあります。ICTを効果的に使うことで、自分から学ぶことができる生徒が一人でも増えて、そのような授業こそが近中のスタイルだという風になれば、嬉しいと思います。

▶︎入試企画部長・芳竹良彰先生

<取材を終えて>
2014年のiPad一斉導入からICT教育の先端を走り続けている同校。キュビナは近畿地方の中学校では初、全国でもまだ数えるほどの学校にしか導入されていない。新しいソフトの導入の決断に、生徒のより良い学びのために、教員も常に変わり続けることを厭わない気風を感じる。そんな教員の姿が、楽しく一歩進んで自分から学んでいける生徒の育成に一役買っているのだろう。2021年度に学習指導要領が一新されることで、また次のステップへと進む同校の教育。自立した学習者の育成を目指して歩みを止めないその姿に、今後とも注目したい。

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