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近畿大学附属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(近畿大学附属中学校の特色のある教育 #12)

見えない人間力を科学で育む! 近畿大学附属中学校が挑む次世代の特色教育

『Ai GROW』と『学習転移』を軸に、中高6年間をつなぐ新カリキュラムが始動!建学の精神を具現化し、総合型選抜を見据えた教育改革の全貌に迫る!

近畿大学附属中学校は、近畿大学の建学の精神である「実学教育(社会で実際に役に立つ、課題を解決する力)」と「人格の陶冶(人に愛され、信頼され、尊敬される人)」の2つを柱に、時代を先駆けた革新的な教育を展開している。「総合的な学習の時間」を組み立て直し、7年ほど前からSDGs学習や企業探究、自分史作成など、時代を先取りしたプログラムを確立してきた。現在、この土台の上で始まっているのが、まったく新しい「特色教育」だ。非認知能力を可視化するシステム『Ai GROW(アイグロー)』の導入や、身につけた力を他の分野へ応用する『学習転移』の理論を取り入れ、さらなる進化を遂げている。単なる受験進学校の枠を超え、社会に出てからも伸び続ける「真の人間力」を育む。そんな教育改革について、特色教育担当室の野田先生と片木先生にお話を伺った。

「特色教育担当室」の誕生と、非認知能力を可視化する挑戦

近畿大学附属中学校の職員室の一角に、教育界の未来を見据えて作られた部署「特色教育担当室」がある。長年培ってきた独自の教育プログラムや、目指すべき生徒像をより強固にし、具体的に社会へと還元するために2年ほど前に立ち上げられた。
同校では約7年前から、独自の「総合的な学習の時間」を体系化してきた。中学1年生での「SDGs、文章トレーニング」、2年生での「新聞づくり、人物研究」、3年生での「企業探究、自分史作成」という流れは、他校からも注目を集める完成度の高いカリキュラムだ。しかし、この取り組みには課題もあった。それが評価と「非認知能力(コンピテンシー)の育成の難しさ」である。
「主体性」や「協調性」、「感情コントロール」といった数値化できない力を、どうすれば生徒に意識させ、伸ばすことができるのか。答えを追い求める中で出会ったのが、コンピテンシーを科学的に計測できるシステム『Ai GROW(アイグロー)』だった。同システムが持つ25個の指標から、【自己効力】【感情コントロール】【耐性】など、同校の目指す生徒像と深くリンクする14個の指標を厳選。昨年度の試験導入を経て、今年度から中学校全学年での完全導入へと踏み切った。
『Ai GROW』の最大の特徴は、自己評価とランダムに選ばれたクラスメイト3人による他者評価を、AIが分析・補正し、総合評価する点にある。ここには先生の評価も入らない。これにより、自己評価だけに頼った従来のアンケートにありがちな「自分に厳しい子が低く出てしまう」「無難に高くつけてしまう」といった偏りを防いで、高い客観性を保っている。
同室の片木先生は、導入による手応えを次のように語る。
「これまでは、目に見えない力(非認知能力)に対する声かけが、どうしても漠然としていましたが、今は『今日の授業は、自分のイライラを上手にコントロールする力【感情コントロール】や、しんどい時にも踏ん張れる力【耐性】を鍛えるためにやるんだよ』と、授業の前に明確な目標を提示できるようになりました。生徒たちにとっても、自分が身につけるべき力が明確になり、お互いの『共通言語』になったのです」
実際に、データは教員たちの「肌感覚」を見事に裏付けている。長年、中学1年生で実施される「夏期学舎(宿泊行事)」の前後でデータを比較したところ、生徒たちの【自己効力感】の数値がなんと6ポイントも跳ね上がっていた。行事を通じて生徒たちが一回りも二回りもたくましく成長する姿が、科学的なデータによって「見える化」された瞬間だった。

▶︎野田先生

▶︎片木先生

『学習転移』という確かな理論を軸に。教員の情熱が授業を変える

「特色教育担当室」の取り組みは、単にデータを測定して終わるものではない。真の目的は、生徒自身に「今、自分は何の力を鍛えている(磨いている)最中なのか」を強く意識させ、その力を学校生活以外の場所でも発揮できるようにすることにある。ここで重要になるのが『学習転移』という考え方だ。
『学習転移』とは、身につけた知識や能力を別の分野に応用することを指す。中高時代に勉強やスポーツ、趣味で素晴らしい実績を残しながらも、社会に出た途端に伸び悩んでしまう人がいる。それは能力がないのではなく、自分が持っている力を他へ応用する『学習転移』ができていないからだという指摘がある。
片木先生は、日々の授業で『学習転移』を生徒たちに伝え続けている。
「例えば、授業の初めに、『今から先生の話をしっかりと聞く時間にします。これはね、単に知識を覚えるためだけでなく、長い話を集中して聞く【最後までじっくり聴く傾聴力】や【やり抜く力(耐性)】を鍛えているんだよ』と伝えます。さらに、『この力がつくと、他の教科の勉強もぐっと楽になるし、将来社会に出て、色んな人の大切な話をしっかり受け止められるようになるぞ』と付け加えます。ただなんとなく座って聞く1時間と、『よし、今のうちに自分の力を鍛えよう!』と思って受ける1時間では全く違ってきます」
授業の前に心構えを作る「マインドセット」を行い、行動させ、最後に「どうだった?」と振り返りを行う。このサイクルを丁寧に繰り返すことで、生徒たちの内面には自信と、どこでも通用する人間力が育まれていく。教員の熱意に導かれ、生徒たちは自分の成長を実感しながら学校生活を送っている。

「実学教育」と「人格の陶冶」。中高6年間を見据えた新カリキュラム

現在、特色教育担当室は、室長であり高校学年主任も経験して高校生・中学生を間近で見つめ続けてきた野田先生が舵を取り、さらなる進化を遂げている。それが、中学から高校への6年間をひと続きで捉えた、新しい総合学習カリキュラムの再構築だ。
この新カリキュラムの土台には、近畿大学の建学の精神である「実学教育」と「人格の陶冶」という2大柱がある。

まず「実学教育」の柱においては、中学1年生で菓子メーカー・ロッテとのタイアップによるカリキュラムがある。生徒たちは新商品の企画やパッケージデザインの提案に挑戦し、世の中に役立つ実学の第一歩を体験する。これが中学3年生になると、「コーポレートアクセス」へと発展。教室にいながら実在する企業のインターンシップを体験し、企業から提示されるミッション(課題)の解決策を探究することで、答えのない課題に向き合い、解決策を見いだす力を養う。そして最終的には、高校での世の中の課題を解決する「個人探究」へとつなげ、さらに大学入試の「総合型選抜」への出願へと直接つなげていきたいと考えている。
もう一つの柱である「人格の陶冶」においては、豊かな人間性を育む探究学習が行われている。中学1年生では、建学の精神を受け継いだ近大の卒業生が世の中でどのように活躍しているのかを調べ、手作りの壁新聞や資料を掲示して解説するポスターセッションの形式で発表する。2年生では視野をさらに広げ、偉人たちの生き方や考え方から学ぶ。3年生では、自分の人生を振り返る「マイストーリー(自分史)」を作成し、高校進学後に取り組む8,000字にも及ぶ本格的な論文執筆への確かな土台を作っていく。
これまで、中学校の3年間でせっかく素晴らしい探究を行っても、高校へ進学した段階でその学びが分断されてしまうという課題があった。今回、高校の探究を熟知した野田先生が統括に入ったことで、中高6年間のストーリーが一本の線でつながった。

生徒会とのコラボレーション。トップダウンからボトムアップの教育へ

▶︎自校教育

特色教育担当室の視線は、すでに次の未来を見据えている。それは、教員からの「押し付けの教育」から卒業し、生徒たちの側から自発的にコンピテンシーを意識し始める「ボトムアップの教育」へのシフトだ。
現在は生徒会とコラボレーションし、生徒たちの手でコンピテンシーを学校生活に楽しく浸透させる仕掛けを考えている。
例えば、「『普段の生活の中で、【感情コントロール】や【耐性】を鍛えるために、自分たちは何ができるだろう?』といったアイデアを、生徒会が中心となって生徒たちへ投げかけ、広めていく。そんな動きを期待しています」と先生方は声を揃える。
生徒会メンバーも、「自分たちの手で学校を変えられる」と活動に意欲を見せる。若手の先生たちも加わり、「生徒たちを巻き込んで、もっと学校全体を盛り上げていこう」と意気込んでいる。答えがすぐに出ず、目に見えない力だからこそ、生徒自身が楽しみ、主体的に育てようとする文化が、ここ近畿大学附属中学校で確実に芽生え始めている。

関西の受験環境に新風を吹き込む、次世代への「種まき」

現在、特に関東圏の教育先進校では、総合学習で育んだ力を『学習転移』させ、学力向上や総合型選抜の成果につなげる好循環が生まれている。一方で関西圏では、近年探究学習や総合型選抜への関心が高まりつつあるものの、学科試験を重視する受験文化も根強く残っている。
「私たちは、総合学習と特色教育の成果を、数年以内に目に見える結果として示さなければならないと思っています。総合学習で身についた汎用的な力は、受験勉強の集中力にも、大学での研究にも、環境適応能力にも、そして社会での活躍にもすべて『転移』する。それを証明したいのです」と片木先生は宣言する。
近畿大学附属中学校が挑むこの教育改革は、単なる一学校の取り組みにとどまらない。近い将来、この学びを経て「私はこんな経験をして、こんな強みがあり、社会でこう貢献したい」と堂々と語れる10代が、続々と羽ばたいていくことになるだろう。関西だけでなく、日本の教育のあり方そのものを変える大きな変革の始まりとなるかもしれない。
未来を生きる子どもたちへの、新たな教育の種まき。近畿大学附属中学校の特色教育担当室が紡ぐ第2ステージの物語から、今後も目が離せない。


<取材を終えて>
特に印象的だったのは、先生方が長年の経験の中で培ってきた「肌感覚」を、『Ai GROW』によって可視化しようとしている点である。生徒の変化を客観的なデータとして共有し、生徒や先生同士の共通言語として活用することで、コミュニケーションの質が高まっていくのではないかと感じた。
また、『学習転移』という考え方にも共感した。「今取り組んでいることが将来どのような力につながるのか」を意識しながら学ぶ経験は、生徒の成長を大きく後押しするだろう。『Ai GROW』による可視化と『学習転移』の実践を通じて、生徒たちが学校での学びを社会で活きる力へと変えていく。近畿大学附属中学校の挑戦に大きな可能性を感じた。

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