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明星中学校
スペシャルレポート <第3回>

興味・関心のスパイラルで
「生きる力」を育む理科教育

5つの実験室や天体観測ドームなどの充実した施設を活用し、中学3年間で100回を超える理科実験や観察を実施している明星中学校。明星大学理工学部との連携により、大学レベルの講義や実験も体験できるようになった。「生きる力」を育む源となる興味・関心のスパイラル形成を目指して、理科教育の改革が進められている。

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大学との連携による「MEISEI アカデミック・ラボ」

5つの実験室や校舎最上階のスタードーム(天体観測ドーム)など、都内でも有数の理科教育施設を持つ明星中学校。これらの施設を活用し、中学3年間で100回以上の実験や観察を実施している。授業とは別に「MEISEI アカデミック・ラボ」を設置し、大学との連携授業や実験を積極的に開催。理科教育は「生きる力」を育む源となると考え、教育改革を進めている理科教科長の一之瀬繁先生に話を聞いた。

一之瀬繁先生

明星大学との連携で大学レベルの実験を体験

同校では10年ほど前から希望者を対象に、授業とは異なるアプローチで、身近な物を使って様々なテーマに挑む「わくわく理科実験」を行ってきた。そこからさらにアカデミックな実験を行うことを目指して、「MEISEI アカデミック・ラボ」を開設。明星大学との連携により、大学で扱う内容の実験や講義なども行われている。一之瀬先生は、「今後のアカデミック・ラボは、明星大学と連携した実験を中心に体験させていきたい」と語る。

「『わくわく理科実験』では授業の中でできない実験を目指してきましたが、本校の教員が担当する限り、中学・高校の範囲を超えることができません。そこで、総合学園ならではの連携を活かして明星大学理工学部の全面協力を得て、本当の意味でアカデミックな実験や授業に中高生が参加できるようにしました。先日、明星大学で行われた3分野(物理・化学・生物)同時開講の実験では20名の募集に37名の応募があり、関心の高さを実感しています。今後は、大学とのコラボレーションをメインに、研究者の卵を育成するレベルを目指していきたいと考えています」

「結果ありきの実験」からの脱却を目指す

理科の授業について中学生にアンケートを実施したところ、実験や観察が「とても嫌い」「やや嫌い」と答えた生徒は全体の9.6%、「とても好き」「やや好き」と答えた生徒は60.1%であった。それにも関わらず、理科の授業が「とても好き」「やや好き」と答えた生徒は、全体の49%。この結果から、「実験や観察の取り入れ方次第で、理科の授業が好きという生徒をもっと増やすことができるはず」と一之瀬先生は説明する。

「実験や観察は、それがどのように社会で利用されているか、どのように発展的なつながりを見せていくかを知ることに、面白さがあると思います。どうやったら本当の意味での興味や関心を喚起する理科教育ができるのか、考えていかなければなりません。アカデミック・ラボも含めて、理科教育全体で改革に取り組んでいます。まずは、『中学・高校の授業で扱う実験は結果ありき』という、今までの理科教育の概念を壊すことが必要です。『このような結果が出るはず』という前提で実験をすると、やる前から結果を気にする生徒が多くいます。ですから、結果を気にさせないような実験を行い、出た結果を尊重し、なぜそのような結果が出たかを考えさせることが重要だと考えています」

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学びを深める「興味・関心のスパイラル」

実験や観察を通して「なぜ?」を引き出す

同校での理科教育は、STEAM教育*のSとして、興味や関心を喚起する重要な役割を果たしていると、一之瀬先生は考えている。

*「STEAM」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Math(数学)の5分野を指し、「STEAM教育」では5つの領域を横断的に学ぶ。

「実験をやって分析をして、なぜその結果が出たか考え、仮説を立てて、検証または実験を行い、またそれを分析する・・・という、興味・関心のスパイラルを形成していくことで、学びは深まっていきます。実験や観察を通して、『なぜ?』を引き出すことが重要です。実験の結果そのものよりも、そこから『なぜ?』と考える時間を大切にしたいと考えています」

一之瀬先生は、「正解がない」試験も実施している。例えば、「なぜこの実験は失敗したか?」という問いに対して、自分の考えを述べさせる問題。考えをたくさん出せることが、研究者への近道だという。

「センスのいい発想をする生徒や、突拍子もないことを言うような生徒を育てていきたいです。ノーベル賞を受賞するような研究者たちは、仮説を立てて実験し、失敗してもその結果に対してまた仮説を立てて検証するという地道な作業を何万回も繰り返します。『なぜ?』から出てくる発想が少ないと、すぐに行き詰まってしまうでしょう。そういった発想力を養うには、学齢の早い段階ほど理想的。ですから、中学生のうちから、教科書通りの結果が出る実験ではなく、どのような結果が出ても結果を尊重し、そこからから仮説を立てて考えさせる実験を取り入れていきたいと考えています。高校入試のことを考えなくてよい、中高一貫教育だからこそできることです」

物理や化学はそのような実験に向いているが、生物や地学には不向きである。そこで生物や地学に関しては、探求活動で掘り下げてとことん追求するスタイルを導入。結果がわからない実験で考えさせる「物理・化学」と、探求活動により深く考えさせる「生物・地学」の2本柱で、興味・関心のスパイラルを形成できる理科教育の実現を目指す。

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理科教育は「生きる力」の源

実験や探求活動を通して「生きる力」を養う

同校は、一般受験を目指す「MGSクラス」と、部活動や生徒会活動なども頑張りながら、推薦入試やAO入試を目指す生徒も多い「本科クラス」の2クラス編成。「本科クラス」では、様々な活動や体験教育を通して、本当の意味で「生きる力」を身に付けていくことが期待されている。その中で、理科教育も大きな役割を果たしていると一之瀬先生は語る。

「実験主体で、考えることや発表などを通して、大学に行ってからも使える理科を体験させたいと考えています。大学では未知の世界を研究するので、結果は誰も知りません。だから、中学・高校でも結果ありきの実験ではなく、未知の世界を扱う実験なども始めようとしています。実験や観察を通して、興味・関心のスパイラルを形成することが『生きる力』を育てることにつながるのです。本校の進路指導では、こんなふうに生きたいという設計をして、どのように社会貢献していきたいのか、そのために何を勉強するか、どこで学ぶかを考えていきます。中高の6年間で『生きる力』を育み、自分の生きたいように生きられるように、後押ししていきたいと考えています」

理科が好きな中学3年生にインタビュー

理科部に所属し、「MEISEI アカデミック・ラボ」にも積極的に参加している3年生の生徒2名に授業や実験について聞いた。

―― 最近参加した実験や印象に残っている実験を教えてください。

<Aくん> 5月に明星大学で教授による3分野の実験が開催されたとき、化学の実験に参加しました。磁性流体(磁石に付く液体)を作る実験です。2種類の鉄イオンにアンモニアなどを混ぜると、オレンジと緑だった液体が黒に変わり、小瓶の外からネオジム磁石という強力な磁石を近づけると、磁石に引き寄せられて瓶の中で移動する様子が見られました。

Aくん

<Yさん> 私も同じ実験に参加しました。身近なものを使った実験では、食塩や洗剤などを使ってパイナップルのDNAを採取したこともあります。細胞を壊して分離させて集めると、白い塊になって肉眼でも見える大きさになりました。爪楊枝で取れるぐらいになります。

Yさん

―― 「MEISEI アカデミック・ラボ」の実験で、楽しさを感じるのはどんなときですか?

<Aくん> 授業では、決まったカリキュラムの中でやる実験ですが、アカデミック・ラボの実験は、そこから外れたものです。あまり難しい理論は使わず、目の前で見て体験できるところに楽しさを感じます。磁性流体の実験では、もともとロケットの燃料補給のために作られたものだということも面白かったです。無重力下ではロケットの液体燃料が浮いてしまうので、燃料をエンジンに送り込むために開発されましたが、実際に利用されることはなかったそうです。

<Yさん> 授業でやる実験は、教科書に書いてあるものなので結果がわかってしまいます。アカデミック・ラボでやる実験は、結果がわからないので、実際にやってみることでいろいろな発見があるので面白いです。

―― 流星群などの天体観測はどのように行っていますか?

<Aくん> 理科部が主催して、周囲の明かりが少ない明星大学青梅キャンパスで年に2回観察会を開催します。理科部は一晩滞在して観察し、その途中に小・中・高の希望者が参加するという観察会です。天候にもよりますが、周りの明かりが少ないので肉眼でも見られますし、撮影できたこともありました。ペルセウス座流星群、こぐま座流星群、ふたご座流星群など、いろいろな流星群を観察すると、短い流星、長い流星、暗い流星、明るい流星など、それぞれに違いがあることがわかります。

―― 「MEISEI アカデミック・ラボ」はどのような雰囲気ですか?

<Yさん>男子の方が多いですが、みんな実験を楽しんでいて、男女関係なく意見交換などもしやすい雰囲気です。

―― 理科4分野のうち、どの分野を学んでいきたいですか?

<Aくん> 化学は、最初と全く違う状態になったり、自分で混ぜたり変えていく変化が目の前で見られることが、言葉で説明されるよりギャップが感じられて面白いなと思っています。説明されてわかった後でも、何度やっても不思議です。

<Yさん> 私も化学が好きです。普段の授業では、周期表など覚えることが多いので、追いつくのが大変ですが、もっと学んでいきたいです。

―― 将来の夢と理科との関わりがあれば教えてください。

<Aくん> 建築に興味があります。理科と直接的に関係ないと思うような分野でも、実際は関係していると思います。建築は、社会の政治的な分野にも関わりが大きく、人と人との関係の上に形作られ、そこに作った人の考え方などが見えてくるのが魅力的です。ビルや家一つひとつより、道路や橋なども含めた街づくり興味があります。国分寺駅のツインタワーが完成して、遠くからも見えるようになるなど毎日街が変わっていく様子を校舎の5階から見るのが楽しいです。

<Yさん> 医療関係の仕事に就きたいです。4歳ぐらいのときに「コードブルー」というドラマを見て、フライトドクターになりたいと思いました。小学校のときは理科の成績がとても悪くて、医師になることは諦めて、薬剤師になろうと思った時期もあります。中1のとき担任だった先生の教え方が自分に合っていて、理科の授業が楽しいと思えるようになりました。成績も上がったので、また医師を目指したいと思っています。


取材を終えて

生徒たちに話を聞いて、様々な物質が変化する様子を目の前で体験することは、言葉による説明よりはるかに大きな興味や関心につながっていると実感した。一之瀬先生は、実験や探求活動を通して「生きる力」を養うことを目指している。「MEISEI アカデミック・ラボ」で結果がわからない実験を重ねている2人には、着実に「生きる力」が育まれていることがインタビューを通して伝わってきた。

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