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2015/11/30(月)

リクルート進学総研所長に聞く。2020年、教育は大きく変わる!(第2回 2/2)

21世紀のグローバル社会に向けて、日本の教育は大きな転換期を迎えています。2020年より、新しい制度による大学入学者選抜(大学入試)が開始します。現在の小学校高学年の児童が大学受験をする時期に当たります。また、高校では大学新入試に先立つ2019年より、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」が導入されます。

国ではどのような教育改革が進行しているのでしょう。大学新入試とはなにか、そして、高校の基礎学力テストとはどのようなものでしょうか――改革のねらいと具体的な内容、今後の展望について、現在、文部科学省・高大接続システム改革会議の委員を務め、国の教育改革に携わっている、リクルート進学総研所長・小林浩氏にお話をうかがいました。

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国立大学でも、AO・推薦型入試の入学者を全体の3割に

Q.高等学校基礎学力テスト、そして新しい大学入学者選抜と、次々に改革が進められていますが、これらを含め今後の教育の展望はどのようなものでしょうか?

基礎学力テストは、試行期間(2019年~2022年)後となる2023年より、テストの結果を、進学や就職のさいに活用できるようにすることも検討しています。2023年からテストの科目を増やし、そのなかから選択受検できるようにする予定です。

初めにお話ししたように、大学入学者選抜は、21世紀の人材育成の観点から「学力の3要素」に基づく選抜へと変わります。大学入学希望者学力評価テストは、偏差値で測れるものではありません。点数で足切りするといった選抜ではなく、高等学校基礎学力テストと同じように、段階評価となります。
また、大学では「学力の3要素」に照らして、多様な学生を受け入れ、育成する必要があります。東大・京大をはじめとする国立大学でも、AO・推薦入試の枠を全体の募集入学者の3割に広げ、きちんとした審査を行い、多様な学生を集めます。

進んだ大学では、複数の教科を合わせた総合型の入試を行っているところもすでに出てきています。今後は、上位大学を中心にそうした入試が増えていくことが考えられます。
また、公立中高一貫校や、一部の私立中高一貫校でも、総合型の入試を実施しています。やはり今後は広く入試のあり方が変わっていくことでしょう。大学教育が変わっていくことも、すでにお話ししましたが、今後各大学では、教育理念にもとづく「三つのポリシー」を明確化し、どんな人材を育てたいのかをはっきりと示します。

三つのポリシーとは、次のものになります。
1.どのような能力を身につければ学位を授与するのかを示す
「ディプロマ・ポリシー」(学位授与方針)
2.どのようなカリキュラムを編成し、教育を行うのかを示す
「カリキュラム・ポリシー」(教育方針)
3.どのような能力をどのレベルで求めるのかを示す
「アドミッション・ポリシー」(学位授与方針)

大学選びも、それぞれの大学が掲げる「三つのポリシー」をよく理解したうえで、検討する必要があります。偏差値で選ぶのではなく、大学の教育の特徴や個性を見て、自分に合ったところを選ぶことが大切です。当然ながら、各大学の入学者選抜も、「三つのポリシー」を反映したものとなります。

多くの友だちとかかわり、自分の言葉で自分を語れるようになってほしい

Q.最後に、家庭での教育として、どのようなことが大切でしょうか?

受動的な子どもではなく、自ら物事にチャレンジする能動的な子どもに育てることが大切でしょう。
“teachingからlearningへ”と言われているように、先生から受動的に教わるのではなく、自ら継続して学ぶ力や、そのためのhow toを身につけていく必要があります。

これからは一つの会社にずっと勤める時代ではなくなるでしょう。大企業に就職しても、その会社がいつまでもあるとは限りません。時代に応じて必要な学びを、一人ひとりが継続して行っていく必要があります。

子どもたちは考える力を養うおもちゃや、ワクワクするような活動的な遊びなど、いろいろな経験を積み、好奇心を養うことが大事です。人とのかかわりも大切です。親子で豊かにコミュニケーションし、多くの友だちとかかわり、協働する態度を養い、自分の言葉で自分を語れるようになってほしいと思います。

そして、子どもの「得意」を伸ばしてあげてください。部活やボランティア活動、委員会活動、その他いろいろ、その子の得意なこと、好きなことに積極的に取り組ませてください。
最後に、国が進めるさまざまな教育改革にも、ぜひ興味を持ってほしいと思います。

< 小林浩氏 プロフィール >
1964年生まれ。リクルート進学総研所長、リクルート「カレッジマネジメント」編集長。リクルート入社後、大学・専門学校の学生募集広報などを担当。経済同友会に出向し、教育政策提言の策定にかかわる。文部科学省「大学ポートレート(仮称)準備委員会」委員(2012年~2014年)、同省中央教育審議会高大接続特別部会臨時委員(2012年~2014年)など、文科省の推進する教育改革に携わり、2015年より高大接続システム改革会議委員