中学女子校の御三家とは
中学女子校の御三家とは
女子の高学歴化が進み、大学進学率が大きく伸びた1980年代、男子御三家から派生する形で「女子御三家」が誕生しました。女子校で東京大学合格実績の高い伝統校、桜蔭・女子学院・雙葉がそれにあたります。今回は、この三校について紹介しましょう。
桜蔭中学校
所在地 東京都文京区本郷
(JR線水道橋駅より徒歩5分、都営三田線水道橋駅より徒歩3分、ほか各線本郷三丁目駅・後楽園駅より徒歩7分)
創立年 1930年
創立者 東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)の同窓会「桜蔭会」
生徒数 714名(15クラス)
高校での外部募集 なし
建学の精神・校風
建学の精神は「礼と学び」。「勤勉 ・温雅 ・聡明であれ」「責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ」を校訓に定めています。さらに「私たちの信条」として、「礼儀正しさ」「勤勉」「自主の精神」「清楚で質素な服装」などを掲げています。
学びの特色
中1は週1時間「礼法」の授業を行います。中2・中3も特別活動のなかで実施するほか、高校の一部でも礼法教育を行います。中3で自由研究に取り組み、1学期初めから夏休みにかけてじっくりと研究します。例年多様なテーマによる完成度の高い論文が揃います。授業では独自教材を使用し高度に学びます。高校は志望別に3つのコースに分かれ、選択科目を豊富に設置。英語・数学は習熟度別授業を行うなど大学受験対策もしっかりと行います。
大学合格実績
東大合格者数では、女子校首位を保っています。2015年度はダントツの76名で前年度より10名増。東大合格率は卒業生数232名に対し32.7%と驚異の数字で女子校の最右翼。2位の豊島岡女子学園30名、3位の女子学院26名を大きく引き離しています。ほか国公立大学は一橋大6名、千葉大15名、東工大5名など。国公立大医学系は東京医科歯科大15名ほか計24名。私立大学は、早慶それぞれ3ケタ合格、上智31名、東京理科大42名。日本医科大14名、東京慈恵医科大26名、順天堂大21名、東京女子医大3名。(以上卒業生数232名)。
2015年度の入試結果
募集人員 240名
志願者数 655名
受験者数 629名
合格者数 271名
実質倍率 2.3
偏差値 72(四谷大塚偏差値。以下省略)
受験者数は2014年度の501人(実質倍率1.9)より大幅増。2015年は“サンデーショック”の年で、2月1日に入試を実施しているプロテスタント校の入試日が、2月2日へ移行しました。これは2月1日が日曜日に当たったためで、プロテスタント校は宗教上の理由から、入試を2月2日に移動させるのが通例となっています。女子学院や東洋英和女学院、立教女学院などの入試が2日に実施されました。そうすると、2月1日に桜蔭または雙葉、2月2日に女子学院、といった組み合わせが可能となり、2015年度は女子御三家すべて受験者増となりました。2016年度入試は三校とも2月1日となるため、桜蔭の志願者数も例年並みに戻るでしょう。
入試科目
国語 50分・算数 50分(各100点)・理科 30分・社会 30分(各60点) 合計 160分 320点 合格最低点非公表
・その他 グループ面接(5名グループ)、保護者面接
女子学院中学校
所在地 東京都千代田区一番町
(東京メトロ有楽町線麹町駅より徒歩3分、半蔵門線半蔵門駅より徒歩6分、JR線・都営新宿線市ヶ谷駅より徒歩8分ほか
創立年 1870年
創立者 ジュリア・カロゾルス
生徒数 677名(15クラス)
高校での外部募集 なし
建学の精神・校風
キリスト教の精神を土台として、人間を超えた存在・永遠の真理に対する畏敬の念を養い、正義を尊び愛と思いやりの心をもって他者に仕える人材の育成をめざしています。プロテスタントの学校として、生徒の自主性が尊重され、明るく自由な校風です。制服や細かい校則もありません。
学びの特色
前期・後期の2期制により、効率よく系統的に6年一貫教育を行います。各学年に週1時間「聖書」の授業を設置。高校では独自教科として、現代史(社会科)、評論読解(国語科)を設置しています。理科の実験・観察やレポート、国語の読書指導や作文など、自ら考察を深める活動を重視します。英語は独自の教科書を使用。英会話は中1から少人数に分かれ、ネイティブ教員が英語のみで授業を行います。高2までほぼ共通カリキュラム(高2は必修選択科目あり)、高3で文系・理系に分かれて学び、進路志望に応じて多様な選択科目を設置しています。
大学合格実績
2015年は東大合格が26名で女子校では3位。前年度の21名を上回る成果が出ましたが、近年、豊島岡女子学園(東大合格30名)の猛追により、2位の座を競い合う状況となっています。ただ、豊島岡女子学園は卒業生数347名で東大合格率は8.6%。女子学院は卒業生数229名で東大合格率11.3%。合格率からいえば女子学院が2位の実績です。ほか国公立大学は千葉大9名、一橋大13名、お茶の水女子大7名、東京外国語大5名、東工大6名、東京藝大4名、横浜国大4名、東京医科歯科大2名など。私立大学は早稲田大148名、慶應義塾大96名、上智大66名、東京理科大42名、明治大58名、立教大30名、中央大25名など。私立医学部には順天堂大4名・東京女子医大各4名、東京慈恵医大3名、東京医科大2名、昭和大3名、日本医科大1名、北里大5名など。(以上卒業生数229名)
分野別進路状況として、文系・理系がそれぞれ約26%、医歯薬看護系が約16%、経済・商業・社会系が約16%と多様なのが特徴です。さらに芸術系が1.6%で、東京藝大の他、武蔵野美術大、多摩美術大などに合格しています。
2015年度の入試結果
募集人員 240名
志願者数 971名
受験者数 873名
合格者数 340名
実質倍率 2.6
偏差値 70
サンデーショックにより志願者数は前年度の744名より大幅増となりました。2016年度は例年並みの700台に戻るでしょう。
入試科目
国語・算数・理科・社会(各40分 各100点) 合計 160分 400点 合格最低点非公表
・その他 グループ面接(5名グループ)
雙葉中学校
所在地 千代田区六番町(JR線四ツ谷駅より徒歩2分。東京メトロ丸ノ内線四ツ谷駅より徒歩4分ほか)
創立年 1909年
創立者 フランスの修道女 メール・セン・テレーズ
生徒数 554名(12クラス)
高校での外部募集 なし(例年、附属小学校より約80名が進学)
建学の精神・校風
カトリック精神に基づく全人教育を理念とし、校訓に「徳においては純真に、義務においては堅実に」を掲げています。教育目標は「真の知性を養う」「自ら考え行動し、責任をもつ」「一人一人を大切にし、他者と共に生きる」。規律の厳しい学校というイメージがありますが、アットホームで温かい校風です。
学びの特色
全学年で週1時間「宗教」の授業を行います。創立時より外国語教育を重視し、英語に加え、中3は全員フランス語を学びます。高校では英語かフランス語を第一外国語として選択します。大学入試の外国語科目はフランス語での受験も視野に入れ、高い語学力を養います。各教科で副読本や問題集を使用して実力を養成。授業進度も速く、小テストなどもこまめに行います。高校はコース分けは行わず、高2は必修選択科目を、加えて高3は自由選択科目を豊富に設け、それぞれの進路志望に合わせて学びます。
大学合格実績
2015年度は東大12名で、女子校として女子学院に次ぐ4位。京大は5名と前年度の1名から躍進。ほか国公立大学は筑波大4名、一橋大6名、東工大4名、東京外国語大6名、東京藝大3名、東京農工大2名、東京医科歯科大2名、防衛医科大学校4名など。私立大学は、早稲田大102名、慶應義塾大56名、上智大54名、東京理科大23名、青山学院大23名、学習院大11名、中央大20名、明治大38名、立教大35名、法政大6名、聖マリアンナ医科大6名、東京医科大6名、東京慈恵医科大3名、東京女子医科大2名、東邦大8名、日本医科大2名、獨協医科大2名など。医歯薬系合格者は70名。(以上卒業生数188名)
2015年度の入試結果
募集人員 100名
志願者数 519名
受験者数 501名
合格者数 147名
実質倍率 3.4
偏差値 67
サンデーショックにより志願者数は前年度の351名より大幅増となりました。例年の志願者数は300台~400台で動いています。
入試科目
国語 50分・算数 50分(各100点)・理科 30分・社会 30分(各50点) 合計 160分 300点。合格最低点は203点で7割以上の得点が求められます。
・その他 個人面接
面接について――何が行われるのか?
受験生向けに桜蔭・女子学院がグループ面接を行い、雙葉が個人面接を行います。桜蔭の場合、面接官2名に対し受験生5名で、約3分間に「志望理由」や「将来の夢」などの質問が全員になされます。3分だから、サラリと聞いて終わり。面接は参考程度となります。
女子学院も桜蔭同様の人数ですが、こちらは約10分間。「志望理由」「受験準備以外でがんばったこと」など比較的じっくり質問されます。また、テーマを与えられ、グループでの共同作業や発表、ディスカッションなども課されます。数枚の絵から1枚を選んでストーリーをつくり発表する、数枚の写真から1枚を選んでコマーシャルを考えて発表し、ほかの人のコマーシャルの感想も述べる、数個の箱の重さをみんなで話し合って推測し、重い順に並べるなど。コミュニケーション力や発表力などを見るものと思われます。
雙葉の個人面接は面接官2名に対し、約3分間に「家族で大事にしていること・家族でだれといちばん話をするか」など家族の触れ合いや家族の話題などを中心に質問されることが多いようです。なお3校とも時事ニュースへの関心も問われるので、準備が必要。
面接のウエイトは、3校ともそれほど高くはありません。素早く、的確に、ハキハキと答えなくてはゼッタイだめなのかといえば、そんなことはないので、お子さんに余計なプレッシャーを与えず、リラックスして受けさせるのがいいでしょう。女子学院のグループでの共同作業も、リーダーシップを発揮できる子どもだけを求めているのではありません。基本的な受け答えをできるようにしておくことです。面接でうまく答えられなかったと落ち込んでいた子が合格したという話はしばしば聞きます。筆記試験が重要であるのは言うまでもありません。
桜蔭の場合、さらに保護者面接(面接官2名対保護者1名。時間は3~5分)があります。「志望理由」や「家庭の教育方針」について聞かれるようです。この保護者面接の出来不出来によってお子さまの合否に影響を及ぼすことはないと思われますが、軽い気持ちで出願してほしくないという桜蔭側の意図がうかがえます。要するに学校が、入試や面接を通じて求める生徒像・家庭像についてシグナルを発信しているということです。特に面接を入試項目に課す場合、受験生や保護者の心の負担になるので、必然的に第一志望のお子さん、ご家庭が受験する可能性が高くなります。学校としてそれを望んで面接を課すことも考えられます。
以上、女子校御三家は、紛れもなく日本のトップ校であり、伝統校であり、それぞれが揺るぎない信念のもとプライドを持って教育を行っています。そうした共通点を持ちながらも、校風や雰囲気は当然異なります。学校の立地環境も校風に少なからぬ影響を与えます。各ご家庭で、ご両親がお子さんの偏差値だけでなく、個性・適性をよく考え、手助けしながらともに学校選びを進めてください。