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スクール特集

中学受験スタディが特別取材した私立中学の特徴ある教育

Special Report - 武庫川女子大学附属中学校

スーパーサイエンスハイスクールについて
SSH推進委員会副委員長の芝﨑眞光先生にお話を伺いました

スタディ:中・高・大一貫の女子総合学園である武庫川女子大学附属中学校・高等学校では、高い教育力と就職率で年々、評価が高まっている武庫川女子大学・同短期大学部へ有利に進学できる環境が整っている。進学校ではあるが、受験校ではないため、受験のためだけの偏った学習に時間を取られることなく、高大連携した独自のキャリア教育プログラムで、大学進学後、そしてその先にある将来の夢へとつながる授業を展開しているのが魅力だ。
武庫川女子大学は6学部14学科と日本最大の女子総合大学で、薬学部や看護学部の医療系学部や建築学科や食物栄養学科など、特に理系に強みを持つ。その強みを活かし、武庫川女子大学附属中学校・高等学校は2002年度より文部科学省が推進する「科学技術・理科大好きプラン」の一貫であるSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校に申請。2006年に私立女子校として日本で初めて指定校となった。今回は、科学に特化した質の高い理数系教育を実践している武庫川女子大学附属中学校・高等学校の「スーパーサイエンスコース」について、化学科教諭でありSSH推進委員会副委員長の芝﨑眞光先生にお話を伺った。

 


芝﨑眞光先生:
「武庫川女子では大学までの一貫教育体制が整っているからこそ、卒業間際まで実験・研究に没頭することができます。自らテーマを見つけ、根気強く繰り返し実験を行った経験、研究に深く取り組んで得た知識と技術が自信となって身につきます。多様化する社会の様々な変化に適応できるようになり、きっと社会の役に立ってくると思います。研究は仮説に基づき、実験を重ね、探求をしていくものですが、想定外のことも多々起こります。そんなとき、より多くの体験を重ねている方が究極の発想が生まれやすい。教員は、生徒たちが自主性を持って研究テーマを見つけ取り組んでいける環境を整えつつ、より有為な女性に育つように、さりげなくサポートすることを心掛けています。武庫川女子で過ごす6年間でたくさんの体験をし、何もないところから答えを見つけ出す力を身に付け、自ら変化を起こせる人に育ってほしいのです」。

 

スタディ:武庫川女子大学附属中学校・高等学校のスーパーサイエンスコースでは、中高6年間を「基礎期」「充実期」「発展期」の3段階に分けて指導する2−2−2制を取り、「学ぶ醍醐味を味わえるカリキュラム」を設定。実践的な理数系科目を充実させているのが特長だ。日頃の学習の発展がどのように日常生活に反映しているかを実際に目で見て体験することで、より科学技術への興味・理解を高めることを狙いとし、適切なタイミングでの校外学習を実施するなど、幅広い知識や考え方、豊かな感性を持った研究者・技術者の育成を目指しているという。


芝﨑眞光先生:「中1で最初に取り組む課題研究は、自然を学ぶこと。校内に生息する1万本もの植物の観察会です。写生をして、生命の営みをじっくりと観察することから取り組みます。そして、専門の研究者の講義を聴き、より知識を深める博物館見学やテーマに従って夏休みを利用した2泊3日のサイエンスツアーを実施。それぞれの学習後には必ずレポートを作成し、学習成果の定着を図ります。昨年度の中1は「種子から製品へ」をテーマに研究を行いました。植物栽培の中での生命の営みを観察した後、収穫して紡糸、搾油などの加工を行って科学技術の基礎を学びます。植物油を取り出してバイオエネルギーやマーガリンへと変換していく物質の変化の過程を実際に見て、考えて、学びを深めていきます。このように日常生活への繋がりを見せていくことを大切にし、基本を身に付けてから論理的展開へ進めることで、理解度が深まるように考えてカリキュラムを組んでいます。この体験を繰り返し、物事を理科的に見て考える力を養っていきます。中2では何事にもチャレンジする姿勢のきっかけづくりとなるよう、一般的に女子が苦手とされる電気・電子工作に挑戦し物理的な考えの基礎を体験。サイエンスツアーでは、日本モンキーセンターなどを訪れ、医薬への興味を持ってもらうことを狙いに、骨の組みたてまでも経験しました。この中1・中2の「基礎期」で科学の世界への導入を図ったのち、中3からは自ら自由にテーマを設定してグループ研究を開始。ときには高校生と一緒に研究をすることで、研究に向かう姿勢を学んでいきます。また、武田薬品など企業の研究施設を訪れ、世の中の最先端の研究を間近で見学。「ギリギリのラインを観に行こう」というテーマでは、深海から宇宙にいたるまでの地球を探り、JAXAやJAMSTECなど最先端の科学技術を駆使する取り組みを見学するなど、充実した郊外研修の機会を設けています。そして、高1からは個人でのテーマ別研究に着手。探求を深めるための基礎を学んでいきます。高2・高3の「発達期」では大学との連携、ときには企業の協力も仰いで実験・実習を繰り返し、研究発表を行います。発表の機会を設けることで、研究への意欲やレベル向上につなげていきます。段階的にステップアップしてきた6年間のまとめとして、高3の科学セミナーでは、研究成果を論文にし、総まとめとして発表の場を設けています」。

 

スタディ:このように大学や各種研究機関との連携による授業や地域の特色を生かした課題研究への取り組み、普段の高校生活では出会えない人との交流、研修によって得る体験・知識など、整えられた学習環境のなかで最先端の科学をリアルに学ぶことができるのは、SSH指定校である武庫川女子大学附属中学校・高等学校だからこそと言えるでしょう。6年間の集大成である研究発表では、学会で発表をするグループもいるため、論文は英語で書けるようにと、中学生から英語の多読を取り入れて「使える英語」の取得を目指し、高2・3では理系英語を学習。論文の書き方も大学院レベルの本格的な取り組みを行っているという。

 

芝﨑眞光先生:「昨年204校が参加した『スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会』にて、『女子中高生の外反母趾の有病率とその関連因子』について研究したグループが審査委員長賞をいただきました。この発表会後も研究を継続し、卒論発表時には英語での発表ができるまでに成長。質疑応答にも英語で対応するなど、大きな可能性を見せてくれました。科学の分野で英語は必ず必要となってくるものです。武庫川女子では早い段階からグローバルに活躍できるスペシャリストを育成するため、高1より海外でのサイエンス研修を実施。風力発電の技術が高いデンマーク・ドイツ、ノーベル賞受賞者を数多く輩出しているスタンフォード大学があるアメリカ、教育先進国であるフィンランド、自然との共生を求めボルネオ島(マレーシア)など、さまざまな国へと出掛けていき、国内外の先端の技術や研究開発に触れる機会を設けています。SSH指定校の海外研修では、国からのサポートもあり、海外担当者が付き添って下さり、普通では入れないような場所も見学させてもらえるという貴重な体験もできます。また、施設見学だけでなく、同年代の学生たちの取り組みを知り、文化・環境の違いを体験することで、視野を広げてもらいたいとの狙いから、現地の学生たちと一緒に授業を受けて交流を深める機会も設けています」。

 

スタディ:「数学演習」「科学演習実験」「理系英語」など、SSコースならではの独自授業を用意し、より深く理数系教科を学ぶことを目指している武庫川女子のスーパーサイエンスコース。実際に高1の実験授業を見学させてもらった。授業のテーマは「醤油を科学で探る」。醤油をガスバーナーで熱し、旨味成分の質量を探る実験だ。実験内容によっては実験に入る前にしっかりと事前学習を行う授業もあるそうだが、感覚を大事にしてもらいたいとの狙いから、今回の事前学習はなし。


授業テーマについての説明のあと、グループに分かれて実験に入っていく。それぞれが自分の役割をよく理解していて、てきぱきと行動に移していくグループが多いなか、なかなかガスバーナーの火をつけられないグループもいる。そんなグループに目を配りつつも、教員はできるだけ手を出さず、次の行動へのヒントを与えるのみ。そうすると、次第に生徒たちは自分たちで考え、意見を出し合い、動きもよくなっていった。特徴的だったのは、教員が投げかける質問に答える生徒たちの反応の良さ。とても前向きで、活気のある授業風景だった。

 

芝﨑眞光先生:「興味を持てば好きになります。教員はいかにして生徒の心に火を付けるかが大事。生徒の心をいかにして掴むかを考えて、授業を展開しています。勉強は楽しく前向きに取り組むからこそ、意義があるし成果が出ます。ですが、子育ては盆栽と同じで自由奔放ではダメである程度のところまできたら手を加えてやる。そうすることで、より個性が伸びていくのだと思います。よいツールがあっても、使えなくては武器になりません。1つの研究にしっかりと最後まで取り組むことで、さまざまなツールの存在を知り、それをしっかりと正しく使える人材を育成することが私たち教員の役割です。授業では大学へ行ってからこそ役立つことを教え、話すようにしています。また、中・高の教員と大学の先生が密に連絡を取れる中・高・大一貫校であるメリットを活かし、ときには大学の先生から直接講義やアドバイスをいただきながら、生徒たちの研究を支えています。武庫川女子で過ごした6年間で体験したこと、そして大学へ行ってから学んだことが、何らかの形で将来の生活に結びつき、人生を楽しんで生きていける知恵となるように、Iコースなら柔軟な思考力と適応性を、スーパーイングリッシュコースなら国際性豊かな思考力の定着、スーパーサイエンスコースなら実験・研修に積極的に取り組んでもらいたいのです。そして全生徒が、世の中の物事を論理的に理解し、人生を心豊かにたくましく生きることができる女性へと成長してもらえるよう、私たち教員は日夜より素晴らしい教育システムの構築を目指しているのです」。

 

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